室内飼いが推奨される現代では、猫の運動不足は切実な問題となっています。

運動不足だと、猫たちにどんな影響があるんだろう。
運動不足が引き起こす問題として、もっともわかりやすいのが肥満やストレスの増加です。猫の肥満は他の病気のリスクを上げる要因にもなってしまいます。

最近、太ってきた気がする。
猫の体型に変化が見られるようであれば、そのまま放置せずに運動環境について見直してみましょう。
- 猫の運動不足の基礎知識
- 猫が見せる運動不足の5つサイン
- 運動不足の解消方法
まずは猫の体型や体重をしっかり把握してきます。そして「意識的に猫と遊ぶこと」と「運動ができる室内環境をつくること」が、運動不足を対策する上で重要となります。
猫の運動不足サインを見逃さず、健康的な生活を長く送れるように一緒に学んでいきましょう。

〈プロフィール〉
- 猫の飼育歴:6年目
- 迷い猫の「くぅ」、保護猫の「みり」と生活中
- 猫と暮らすヒントをご紹介
- 猫たちとの遊びを充実させるためのアイテムを模索中
- キャットログを使い続けて【10ヶ月目】
猫の運動不足に関する基礎知識
猫の運動不足は、肥満やストレスといった健康リスクを高める要因になります。特に室内飼いの猫は運動不足に陥りやすいため、飼い主さんが意識して遊ぶ時間や運動する場所を準備することが重要です。
適切な運動は健康な体型を維持するためだけでなく、ストレス発散にも不可欠となります。
運動不足が招く健康リスク
2013年に日本ヒルズ・コルゲート株式会社が行った調査では、「動物病院に来院する猫の1〜3割が肥満」と答えた獣医師が最も多かったと報告しています。
»参考 獣医師から見た「ペットの肥満」傾向調査【2008 vs 2013】 | 日本ヒルズ・コルゲート株式会社のプレスリリース
運動不足が猫の健康に与える影響は大きく、肥満になったり、ストレスが増えることで、さらなる健康リスクを招く可能性があります。
- 肥満のリスクが高まる
- 肥満によって、糖尿病のリスクが増加する
- ストレスが溜まりやすくなる
- 免疫機能が低下し、病気にかかりやすくなる
- 消化器系の問題が起こりやすくなる
- 過剰なグルーミングや攻撃性が増すなどの問題行動
- 生活の質が低下する
猫が肥満になってしまうと、ダイエットも必要になってきます。食事を制限しつつ運動も必要となるため、猫本人だけなく、飼い主さんにも大きな負担がかかります。

うちの子は肥満なのかな?
ネコちゃん無料肥満度チェックというサイトで簡易的に肥満度を判定することが可能です。まずは、現在の体型が適正なのか、肥満気味なのかチェックしましょう。
猫に必要な運動量の目安

猫の運動って1日どのくらい必要なの?
猫の健康を維持していくには、1日15分程度を一つの目安に活発な遊びや運動をするのが理想的です。
運動時間のポイントは「飼い主さんが猫たちの活発な運動を引き出せるか?!」という点にあります。
若い猫たちは活動量も多いため、遊びによく反応してくれます。一方で、7歳以降の成猫になってくると飼い主さんがアクションを起こさない限り、猫たちの運動量も減ってきてしまいます。
最長でも10分をメドにして、猫が「もう終わるの」「もっと遊びたい」という気持ちのうちに切り上げるのがポイント。
引用:動物行動学+猫マンガ ニャン学 茂木千恵 主婦の友社 P.203
必要な運動量は、年齢や性別、健康状態によって異なります。若い猫は多くの運動が必要ですが、高齢猫の場合は軽い運動を複数回に分けて行うと良いです。
室内飼いの猫には、意識的に運動する時間を設けることが大切です。
遊ぶ習慣を身につける必要性について
年をとってくると運動量が減りますが、子ネコのうちから一緒に遊ぶ習慣をつけておくと、中年期(11~14才)になってもある程度遊びの誘いに乗ってくるので、肥満や運動不足の予防にもなります。
引用:服部 幸. ネコにウケる飼い方 <カラー版> (ワニブックスPLUS新書) .
年齢を重ねてくると猫たちも運動が億劫になり、飼い主さんが遊ぼうと思ってもそっぽを向いてしまうことがよくあります。猫の年齢が若いうちから遊ぶ習慣をもつことが重要です。
猫の運動不足になってしまう3つの原因
猫が運動不足になってしまう大きな要因は室内環境と飼い主さんです。「猫はなぜ運動不足になってしまうのか?」、その原因について深掘りしていきましょう。
- 室内飼いによる制限
- 飼い主さんの多忙
- 環境の変化やストレス
室内飼いによる制限
室内飼いは猫の安全を守る上でとても重要で、現在猫を飼う上で推奨されている飼育方法です。その一方で屋外での生活と比べると活動が制限されるため、猫の本能的な欲求を満たしにくいという側面を持っています。
- 狩猟行動
- 探索や遊び
- 運動スペース
- 高所や隠れ場所
室内飼いによるさまざまな制限により、猫は退屈になりやすく、ストレスを感じる可能性があります。
これらの制限を解消してあげるためにも、飼い主さんとの遊びの十分に確保し、猫が退屈しないように室内環境を整えてあげることが重要となってきます。
飼い主さんの多忙
飼い主さんの多忙によって猫と遊ぶ時間が不足することも、猫の運動不足の大きな原因の一つです。
忙しい日々の中で、猫との触れ合いや世話が後回しになりがちになってしまうことも多いかと思います。特に一人暮らしで猫を飼われている飼い主さんの場合に、気をつけたいポイントです。
- 仕事や家事で遊ぶ時間が取れない
- 長時間の外出や残業で帰宅が遅くなる
- 疲れて帰宅すると世話が億劫になる
- 忙しさのストレスで余裕がなくなる
- 猫の運動不足に気づかない
忙しい生活の中で「どうやって猫と遊ぶ時間を確保するか?」という問題を再度考えてみましょう。
環境の変化やストレス
環境の変化やストレスは、猫の運動不足の原因です。猫は敏感な動物なので、周囲の変化に影響を受けます。猫の運動量を減少させる要因は、以下のとおりです。
- 引っ越しや家具の配置変更
- 新しい家族やペットがくる
- 長期の留守番
- 飼い主さんの生活リズムの変化
- 騒音や工事
環境の変化があると猫は不安を感じて隠れたり、警戒して動き回らなくなったり、活動量が低下することがあります。またストレスで食欲が低下したり、体力が落ちて運動量が減ってしまうということも考えられます。
環境の変化やストレスによる運動不足を防ぐには、猫にとって安定した環境を維持することが大切です。変化が避けられない場合は、猫が新しい環境に慣れるまで時間をかけて見守り、スキンシップを増やして安心感を与えましょう。

運動不足になっている猫の5つのサイン

運動不足かどうか、どうやって調べたら良いの?
猫が運動不足に陥っている際にみせるサインを見逃さないようにすることが重要です。
- 体重が増加する(肥満)
- 過剰に毛づくろいをする
- 遊びに興味を示さない
- 無気力になる
- いたずらが増える
これらの行動が頻繁にみられる場合は、猫たちが運動不足になっていないか今一度見直してみましょう。
体重が増加する(肥満)
体重の増加は猫が運動不足になっているサインの一つです。食事量に対して運動が不足する(消費カロリーが少ない)と、体重が増加します。
猫の体重を定期的に測定し、理想体重の15%以上の増加が見られたら注意してください。肥満かどうかを確認する際は、体重だけでなくBCS(ボディコンディションスコア)もあわせて測定してみましょう。
引用:環境省 飼い主のためのペットフード・ガイドライン(2009)
体重の変化に気づいたら、猫の運動不足や食事内容を見直す必要があります。適切な運動と食事管理で、健康的な体重を維持しましょう。
【最近太ってきた?】|猫の食事量の計算方法と調節する際のポイントを徹底解説!という記事の中でも猫の体重測定について詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。
過剰に毛づくろいをする
過剰な毛づくろいは、猫が運動不足やストレスを感じているサインです。猫がいつもより頻繁に体を舐めたり、特定の部位を集中的に舐めたりする場合は注意が必要となります。
過剰な毛づくろいが続くと、毛玉や皮膚のトラブル、脱毛、皮膚の炎症などの問題が起こります。少しでも気になる場合は獣医さんに一度相談してください。

毛づくろいの時間はどうやって測れば良いの?
猫たちの行動を1日中観察するのは難しいですよね。毛づくろいの時間を測る場合には、キャットログを使用してみることをオススメします。
キャットログについては、【購入前に要チェック!】|キャットログの便利機能とメリット・デメリットを徹底解説という記事で詳細に解説しているので、こちらの記事も参考にしてみてください。

遊びに興味を示さない
猫が遊びに興味を示さなくなる場合も運動不足のサインです。一方で飼い主さんの遊び方が単調であったり、好みのおもちゃでないために、反応が鈍い場合も考えられます。
遊びに興味を示さないのか、遊び方に問題があるのか、慎重に見極めましょう。
- おもちゃに反応しなくなる
- 遊ぶ時間が減る
- すぐに遊びに飽きる
- 新しいおもちゃにも興味を示さない
また、遊びに興味を示さない原因は運動不足だけでなく、ストレスや体調不良の可能性もあるため注意が必要です。
無気力になる
運動不足の状態が続くと、普段の元気がなくなり活動量が著しく減少することがあります。
- 長時間眠り続ける
- 遊びや食事に対する反応が鈍くなる
- 表情が乏しくなる
- 呼びかけに対する反応が遅くなる
いたずらが増える
猫の運動不足はいたずらの増加につながるケースもあります。いたずらの増加は、猫が余ったエネルギーを発散しようとするためです。
- 家具や壁を引っかく
- 物を落としたり倒したりする
- 夜中に騒いだり、鳴き声が増えたりする
- カーテンや植物を噛む
- 飼い主に突然飛びかかる
いたずらは猫にとって遊びや運動の代わりですが、飼い主にとっては困った問題です。特に夜の運動会に代表されるように、日中溜まったエネルギー発散するために大騒ぎすることもあります。
いたずらや夜の運動会は猫が運動しやすい環境を整えたり、遊びの時間をしっかり確保することで減らすことができます。
猫の運動不足を解消する方法
猫の運動不足を解消するためには、できるだけ決まった時間に適度な量の運動を取り入れることが重要です。室内飼いの猫は運動不足になりやすいため、飼い主さんが工夫して運動の機会を増やす必要があります。
- 猫と一緒に遊ぶ
- 1人遊びできるおもちゃを用意する
- キャットタワーやキャットウォークを設置する
猫と一緒に遊ぶ
飼い主さんが猫と一緒に遊ぶことは運動不足解消に最も効果的なだけなく、猫とコミュニケーションをとるという面でも重要です。猫と遊ぶことは肥満を予防するだけでなく、ストレスの解消にもなるため、猫の健康管理を考える上でとても重要です。
- 猫じゃらしなどのおもちゃを使った遊び
- 階段や廊下を利用したダッシュ
- かくれんぼ
- 手作りのおもちゃを使った遊び
遊ぶ時間は、1日に15分程度を目安に行いましょう。できるだけ決まった時間に遊んであげることも重要です。
1人遊びできるおもちゃを用意する
1人遊びできるおもちゃをあわせて準備しておくと、猫の運動不足解消に効果的です。帰宅後のどうしても手が離せない時間でも、先に猫たちを遊ばせておくことができるため、運動時間の確保に役立ちます。
- キャッチボール用のボールやぬいぐるみ
- 噛んで遊べるおもちゃや隠れ家や段ボール箱
- 猫用のパズルフィーダー
- 猫用のトンネルや紙袋
猫用のトンネルやキャッチミーイフユーキャン2などの自動で動く猫じゃらしは我が家でも大変重宝しています。
キャットタワーを設置する
上下運動やジャンプできる環境が少ない室内飼いの猫たちにとって、キャットタワーは運動スペースとして重要な役割を果たします。キャットタワーあることで、猫じゃらしでの遊び方の幅を広げることが可能です。
設置が可能であればキャットウォークも検討してみましょう。

色々設置してあげたいけど、スペースがないな…。
そんな場合には本棚や冷蔵庫といった家具の配置を工夫してあげることで、猫たちが高い場所へ登るという機会を増やしてあげましょう。
猫の年齢に合わせたおすすめの運動方法
運動能力が高い猫たちも年齢にあわせて、運動方法や遊び方を工夫してあげる必要があります。特にシニア期の猫たちは無理な運動をさせることで、怪我のリスクを高めてしまうこともあるので、遊び方やキャットタワーの選び方に注意が必要です。
子猫~成猫期におすすめの運動
- 猫じゃらしを使った追いかけっこ
- 軽くて転がりやすいボール遊び
- 段ボール箱やトンネルでの探索遊び
- キャットタワーでの登り降り
子猫~成猫期の猫は運動量が多く、活発で楽しい運動が必要となります。一方で成猫は同じ遊びを続けることでおもちゃに飽きてしまったり、遊びに応じてくれないことがあるので、遊び方を工夫してあげることが重要です。
- 色々な形状の猫じゃらしを試す
- 猫じゃらしの使い方を工夫する
- 猫じゃらしと他のアイテムを組み合わせてみる
成猫~シニア猫期におすすめの運動
成猫~シニア猫期の猫には、体力や健康状態に配慮した運動がおすすめです。短時間の遊びを1日数回に分けて行うようにしましょう。
- 低いキャットタワーでの登り降り
- 低めの障害物を使った運動
- 食事の場所を少し変えて歩かせる運動
- 階段の上り下り
シニア猫の場合は、より穏やかな運動が必要となります。猫の体調や気分に合わせて無理のない範囲で行いましょう。猫が楽しんで運動できるよう、飼い主も一緒に楽しむ気持ちで接することが大切です。
猫の運動不足に関するよくある質問
猫の運動不足に関するよくある質問をまとめました。猫の運動不足を解消する際の参考にしてください。
- 猫が遊びに興味を示さない場合は?
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猫が遊びに興味を示さない場合、おもちゃを変えてみたり、遊び方を工夫する必要があります。猫にはそれぞれの好みや興味に合ったおもちゃがあるので、いろいろなタイプのおもちゃを使ってみてください。
- 新しいおもちゃを導入する
- おもちゃをローテーションさせる
- 短時間の遊びから始める
- 行動が活発な時間を狙って遊ぶ
- おもちゃに好きな匂いを付ける
- 音や動きのあるおもちゃを使う
- トンネルやカーペットを活用して、探索行動を刺激する
さまざまな方法を試して、猫の興味を引き出しましょう。
猫が遊びに興味を示さない原因として、ストレスや体調不良が考えられる場合もあります。猫たちの様子が改善が見られない場合は、獣医さんに相談してみてください。
- 高齢猫や病気の猫を安全に運動させる方法は?
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高齢猫や病気の猫を安全に運動させるには、獣医さんに相談することが大切です。猫の状態に合わせたプランを立てて運動させれば、健康維持につながります。
運動中や運動後は猫の様子を注意深く観察し、疲れや痛みのサインがないか気をつけてください。猫の状態は日々変化するため、常に様子を見守りながら運動させましょう。
- 猫に散歩は必要?
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筆者は猫にとって散歩は不要であると考えています。散歩には様々なリスクが伴いますが、特に大きいのが脱走のリスクです。
猫たちは突然の音や状況に対してパニックになってしまうことがあり、不運にも散歩中にそのような状況に陥ってしまうと飼い主さんだけでは制御できない可能性があります。
猫の散歩に関しては、【猫の散歩はおかしい?】|飼い主さんが知っておくべき3つのリスクという記事を参考にしてみてください。
あわせて読みたい【猫の散歩はおかしい?】|飼い主さんが知っておくべき3つのリスク SNSや海外の映像などで猫が散歩している動画をみていると、「猫も犬と同じように一緒に散歩ができるんだ!」と感じますよね。 うちの猫はよく外に出たがるから、散歩し…
まとめ ー猫の運動不足の基礎知識ー
運動不足は猫の健康に大きな影響を与える問題です。室内飼育が推奨される現在では、飼い主さんが運動不足に対する知識を学び、猫と意識的に遊ぶことがより重要になってきます。
まずは猫たちの行動や体重の変化を把握して、運動不足になっていないか確認してみましょう。
そして一口に猫と遊ぶといっても、ただ猫じゃらしを振っているだけでは猫たちもすぐに飽きてしまいます。猫じゃらしの好みを見つけ、遊び方を工夫してあげることとも飼い主さんの腕の見せどころです。
自動の猫じゃらしやボールなど、猫が1人遊びできるようなアイテムも活用して、猫が運動できる時間を増やすように意識してみてください。